⭐︎ホホホ座イベント情報⭐︎
ホホホ座で行なわれるイベントの情報をご紹介
4月1日〜5月15日
EKKO / SOLO EXHIBITION
“GREAT MOUNTAIN REMEMBER ME”
会期:4月1日(金)〜5月15日(日)
会場:ホホホ座浄土寺店1階店内(営業時間 11:00〜20:00)
東京を拠点に活動するアーティストのEKKOが、一連の絵馬シリーズ (小さい油絵) と、新作のモノタイプの版画作品を展示いたします。
*2015年にトラウマリスレーベルから出版された作品集”UN DIA/Show me the way to go home”をサイン入りで販売
*4月1日のホホホ座1周年『ホホフェス』には作家在廊致します。
EKKO
詳しくは下記まで
そしてホホホ座へ
ガケ書房は2015年2月13日をもって移転し、現在は京都市左京区浄土寺でホホホ座として営業されています。
ホホホ座ロゴ
(http://hohohoza.comより引用)
©ホホホ座
ホホホ座外観
(http://hatenanews.com/articles/201504/23448より引用)
ガケ書房の壁、解体時の様子(http://hatenanews.com/articles/201504/23448より引用)
ホホホ座は書籍や雑貨の販売もしつつ『わたしがカフェをはじめた日』(小学館)など編集・企画も行っている。
(http://gake.shop-pro.jp/?pid=75594454より引用)
単に店を構えているだけではなく、制作グループであることを自負するホホホ座。今後はどのような活動を展開してくれるのか、目が離せない!
DATA
ホホホ座
〒606-8412
京都府京都市左京区浄土寺馬場町71
ハイネストビル1F 書籍・雑貨2F 古書・雑貨
http://hohohoza.com/
Tel:075-741-6501
Fax:075-741-6712
営業時間
1F11:00〜20:00(無休)
2F11:00~20:00(不定休)
Email:1kai@hohohoza.com(1F)
2kai@hohohoza.com (2F)
info@hohohoza.com (お問い合わせ)
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山下 賢二さん
「あなたのお気に入りの本屋は?」と聞かれたら真っ先にガケ書房を紹介するだろう。そのユニークな書店を作り上げているのはいったいどんな人なのか……。考えるほどに、店長である山下賢二さんの頭の中が気になり出す。魅力溢れるガケ書房と、その世界感を作り出している山下さんについて、本人にお話を伺った。
宝石箱ではなく、宝箱
本屋という空間が好き
——山下さんは二十代の頃、どのように過ごされていましたか?
ほとんど働いていました。実は高校を出てから家出をしたんです。バイトをして、就職もしましたし、二十代はずっと自分の天職を探してました。
——では、一度出版社に勤められたというのは好きだったからですか?
好きだったのもありますし、当時、友達と一緒に雑誌を作っていたのでその流れで出版社に勤められたのだと思います。とにかく一生懸命働いていました。
——その時に作られていた雑誌が『ハイキーン』(ⅰ) ですか?
そうです。
——それがガケ書房を作るに至る大きなきっかけですか?
きっかけになりましたね。もう既にその時から「ガケ書房」という名前を出版社名として使ってました。だからガケ書房は実は二十年前から存在しているんですよね。
——実際にこの書店を作られたのは、やっぱり本屋をやりたかったからでしょうか?
もともと本屋という空間は好きだったのですが、他の所に勤めているときは本屋として仕事をしたいという意識はあまり持っていませんでした。もちろん出版社に勤めているときは自分で編集した雑誌を出したいと考えていました。ほかにも紆余曲折、様々な仕事をしました。出版社に始まって、印刷屋、古本屋、そして新刊書店に勤めた後、ガケ書房という流れがあるんですけど、自分の店を持ちたいと思ったのは、古本屋でアルバイトしたことがきっかけです。その時に初めて対面販売、つまりお客さんに直接売る商売を経験しました。しかも、その時働かせてもらっていた古本屋さんでは僕が店を任せられて、店のルールを僕が作っていいと言われたんです。特に古本は値段を自分で決められるでしょ?
——そうですね。
だから、その時は自分の価値観を押し付けられる、いい商売やなと思いましたね(笑)
——なるほど(笑)
それで、最初は古本屋をしようと思ったんです。でも、京都かどこかでやろうと本を集め出した時に、よくよく考えたら古本屋って、みんないらない本ばっかり持ってくるよなと気づいたんです。
——確かにそうですね。
いる本、欲しいと思う本は中々入ってこなくて、結局いらない本ばかりで在庫がいっぱいになってしまうのは大変だなって。それで単純に「新刊書店だったら、注文して、新しい上に欲しい本が入ってくるやん」と思って(笑)。当時は東京にいたんですけど、ちょうど京都に帰るタイミングがあったので、帰ってきてから京都の大きい書店に勤めました。そこで修行をした後、今のガケ書房を始めました。それまで基本的に、最初の印刷会社にしても出版社にしても、実は一度も僕の意思で辞めてないんです。一つ一つを始めたきっかけは違いますが、どんどん後ろから押されて、最終的にこのガケ書房にたどり着いたという感じがします。
コミュニケーションが作り出した空間
——ガケ書房に新刊と古本屋セレクトの文献が一緒にあるというのは、作られた当初からですか?
最初は僕の古本を置いていました。だけどそのうちに、「俺の古本を置いてくれ」って言う人が現れたり、「僕に庭 を作らせてくれ」と言う人が現れたりだとか、色んな人が出入りしていくうちに、段々とマイルドになった感じです。やりだした頃は、僕自身が気負っていたところもあり、一方通行な店でした。自分の趣味を押し付けてしまっていて、全くコミュニケーションが出来ていない状態だったので、お客さんの反応もあまり良くなかったんです。そこで自分を知ったというか、コミュニケーションの基本を改めて知らされました。コミュニケーションって双方向からお互いの話をし合って深まっていくものなんだって。だから、一方的に自分のこと喋っても、うっとうしいと感じられてしまうだけですよね。
——今のお店からは想像がつかないです。
そうかもしれません。やっぱり初めて自分の店を出したから、「ここに俺の店あり!」みたいな感じで自分の主張ばかりに一生懸命になってしまっていたので。でもその状態だと、みんながドン引きしていくのが分かって、やっと「そうか、これじゃいけないんだ」って気づいたんです。そこで、コロッと方向転換しまして、もっとコミュニケーションとって色んな人の知恵を借りながらやっていこうということにしました。自分の限界をすぐ知ったんです。僕は、人間一人のキャパシティってほんとに狭いと思っています。だからここまでこれたのはスタッフや常連さん、友達のおかげです。
——ガケ書房に本を置いてくださいと言った人たちは、どんな人たちだったんですか?
セミプロの人もいましたが、学校の先生やミュージシャン、写真家といった古本が単純に好きという人がほとんどでした。一番最初は近所に住んでる古本ライターの方でした。ラインナップを見たら面白いし、絶版本だったので置き始めたんです。と言うのも、ガケ書房に置く古本は絶版本じゃないとだめだと決めているんです。新刊書店なので、今流通している本を売ってしまうとただのセカンドセールや安売りになってしまう。それだとやってる意味が全くないので。絶版本であり、かつうちのお客さんのニーズに沿った本を持ってきてくれる人が段々増えてきましたし、その流れで色んな人が色んな事を提案するようになりました。イベントやもぐらスペース (ⅱ)など。
——お客さんを含め、色んな人の力によって、できあがっていったんですね。
占いであったり喫茶店であったり、色んなことを提案してくれるので楽しいですね。彼らの提案のおかげで、だんだんと耕されていく。さっき話した庭も、ガケ書房の元々空いていたスペースを僕の練習する場所として庭を作らせてくださいと、ある庭師さんから言われたことがきっかけなんです。それで、僕は亀が好きなので「じゃあ、亀の住める庭(ⅲ)にしてください」って提案しました。そういったように、誰かが何か提案してくれたことに、ガケ書房なりの提案をすることを意識しています。
——お店の外にある車(ⅳ) も山下さんが考えられたものなんですか?
あの車や店の外観は、初めから僕のイメージにあったものです。このデザインにしたことにも二つ意味があるんです。一つはビジュアルで、つまりパッと見の印象でお店を覚えてもらおうということ。例えばおばあさんが説明するときに「あー、あの車の突っ込んでるところなー」と言うそれだけで、お互い共通の映像が浮かぶ。そういったことを狙いました。実際に京都駅からタクシーに乗って、「車の突っ込んでるとこに行って下さい」って言ったらちゃんとここに来るらしいんですよ。これは成功したなって思いましたね。
——まさに、ガケ書房は京都に唯一の存在なんですね。もう一つの意味はなんでしょうか?
元々この物件は窓ガラスが大きかったので、防犯上危ないかもという危惧がありました。そこで光を塞がないように石を積み上げて、塀を作ったんです。でも、それだけだとほんとに壁だけになってしまうので閉鎖的ですよね。だから車を付けたんです。それによって外との接点を作ろうって。一つ目の見た目のインパクトと同じですが、ツッコミ所になりますよね、「なにこれ!」っていう。そういった気になる要素という“とっかかり”を作って、外とのコミュニケーションの一つにするという意味があの車にはあります。ただ最初は何屋さんなのかよく理解されなかったですけどね。中が見えないからアダルトショップと間違われたり(笑)。
——それは入ってびっくりですね(笑)。ガケ書房という名前は『ハイキーン』の時から使っていたそうですが、実際の外観が〈ガケ〉というイメージにあっているなと感じるところは、意識されたわけではないんですか?
そうですね。その外の壁を作るときに石の素材と完成イメージをデザイナーが見せてくれた時に、「これガケっぽいし、まさしく〈ガケ〉書房やな」という感じでたまたまです。単純にそれだけなので狙って作ったわけではないのですが、うまい具合に良いものができましたね。
すべてが無駄じゃない
——現在、お店をやられている中で、出版社に勤めていた頃など以前の経験が活かされてると感じることはありますか?
もちろんです。出版社以前にも様々なアルバイトをしましたが、これまで経験した仕事は必ず全部どこかで役に立っています。たとえ、全く違う職種をやっていたとしても、「これはあそこで覚えたやり方やな」と思い出すんです。お金の数え方や管理の仕方といった商売をする上で共通のことはもちろん、すべてが無駄じゃなかったなと今では感じています。どれだけ寄り道しても、繋がっていくんだなと。
——やっぱり若いころには色々なことに取り組んでいたほうがいいと思いますか?
そうですね。でも僕は苦労は買ってでもするというのではなくて、単純に好奇心で取り組むことが多く、生きているうちにできるだけ色んなことをしてみたいと思っていました。だから、単純に自分がしたいっていう好奇心でやったほうがいいかもしれません。義務的に苦労する必要はないと思うので。好きで取り組んだことも何気なく手を出したことも、後々になって、不思議と絶対無駄にはなりませんから。
「ユーモアとロマンチックが同居している」
——ここで仕事をされていて、最も充実しているなあと感じる瞬間はどんな時ですか?
やっぱり自分の好きな本が売れたときですね。実はここの品揃えに僕の趣味は入っていないので、置いてある僕の好きな本が売れたときは、心の中で「よっしゃあ!」って思います。
——店内のデザインなどで心がけていらっしゃることは何ですか?
基本的には気持ちをリラックスさせる空間を目指しています。あんまりかしこまった空間にはしたくないので、童心までとはいかなくても、テーマパークのようにテンションが上がるような空間を作ることが目標です。細かいところを見てもらったらわかるんですけど、例えば防犯カメラがウルトラマンになってたり、天井に絵が書いてあったり。雰囲気や品揃えも含めて、あるテーマを言うならば、「ユーモアとロマンチックが同居している」です。どちらかが過剰でもダメ。ユーモアだけが目立つのでも、ロマンチック過ぎるのでもなく、両方いいぐらいのバランスでいること。
——ぴったりですね。まさしくガケ書房だとピンときました。山下さん自身のポリシーや信念として持っているものはありますか?
常にニュートラルでいることです。思い込みや先入観、偏見といったものがなるべく ないように物事に接して、多方面に挑戦していきたいと思っています。
振り返って一番楽しいのはガケ書房、そして未来は
——最後に、今後の目標や未来図を教えてください。
製造業をしてみたいですね。書籍を作る方です。ガケ書房の発祥は出版社なので、もう一度そこから起動したいと思っています。
——どんな本を作りたいなどはありますか?
実は今、一つ進行中のものがあるんです。京都内にあるカフェでも、女性の店長さんが営むカフェに行って話を聞き、カフェがオープンするまでのストーリーを紹介する、というものです。
——面白そうですね。気になります!
(笑)。
——はじめに、アルバイトをされていた時には天職を探したかったと仰っていましたが、今の仕事は天職だと感じていますか?
実はまだわかりません。仕事はもうゴールがないんですよね。一日だけ体験と言って、フリーマーケットで店を出すとかだったら楽しいんですけど、毎日同じ仕事でしたら、どんな仕事でも、たとえ自分がやりたくて始めた仕事でも、辞めたくなる時だってあります。ずっと楽しかったら仕事ではなく、遊びですよね。やっぱり、仕事はしんどい時が絶対にある。だから、天職かどうかは死ぬ前にわかるんじゃないかなって思いますね。でも、振り返ったときに一番楽しいのはガケ書房かな、という気がします。ここでの色んな人との出会いは大きいですし、出会いがあると感じられる良い仕事場だと感じていますから。
——個人的なことですが、ガケ書房には変化を感じます。
おっ、いいとこついてきましたね。常に変化している、ということは意識しているのでそう感じてもらえることが僕の、この店の目標でもあります。
——わたしはその先ほど言われた、仕事が辛いということがあってもガケ書房にはその辛さを立て直すような、そういう位置になるものがいっぱいあるなって思ったんです。
それは本当に嬉しいですね。やっぱり一番は、人生に疲れた時に来てもらって元気になってもらうことです。より多くの人がそのことを感じられるように、僕もガケ書房も成長し続けます。
脚注
ⅰ 山下さんが友人と二人で「雑誌をつくろう」と言って誕生した写真雑誌。ガケ書房は架空の版元として登場している。
ⅱ ガケ書房入口脇にある1.5m四方の空きスペース。もぐらの壁画がある。占いやカフェなど、期間限定の貸出スペースとして様々なイベントが行われる。
ⅲ ガケ書房店内の窓ガラスから見える亀専用の小さな庭。通称「亀庭」。現在4匹の亀たちが暮らしている。
ⅳ ガケ書房の壁から飛び出すようにして取り付けられている車。通称「ガケ車」。ガケ書房の名物的存在。2012年まで、さまざまなアーティストによる外装と内装の模様替えがなされていたが、現在は一つのデザインに落ち着いている。
本文中の役職、肩書き、固有名詞、その他各種名称等は全て取材時のものです。
『ガケ書房の頃』(夏葉社)
発売中!
シンボル的存在の「ガケ車」
店内の様子
Interview! vol.2_誌面
Plofile
1972年生まれ。京都出身。京都市左京区北白川にある『ガケ書房』の店長。高校卒業後はアルバイトをして過ごす。その後、出版社、印刷会社に就職。古本屋や新刊書店で本屋としての経験を積み、2004年にガケ書房をオープンする。亀が好き。
宝石箱ではなく、宝箱。素敵な空間には、それを作り出している素敵な人がいることを知った。山下さんはインタビュー後、「僕、あまり良いこと言ってないですね」と言って笑っていた。しかし、仕事中にも関わらず、一学生の質問に真摯に応えるその姿と、人を楽しませるというエンターテイメントの精神を持ち合わせた山下さんの人柄に、わたしはプロの姿を垣間見、素敵な人だと心を打たれた。そして、ふっと笑みのこぼれるガケ書房にて童心に帰ろうと、何度となく足を運ぶ一人となるのだろう。(中野千秋)