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What’s up京造

〜男子編〜

THE Interview! show!! 1日目、BetweeNの水上先生と平井先生による教授対談やシロくま先生のお話に負けない濃い内容となった男子学生対談! 授業やプロジェクトの魅力など学生だからこそ感じる生の声を余すところなく聞いた。

出演

 

美術工芸学科 染織テキスタイルコース

虎岩 慧さん

 

美術工芸学科 陶芸コース

櫻澤 克征さん

 

映画学科 映画技術コース

佐藤 雅彦さん

 

美術工芸学科

染織テキスタイルコース

浅見 旬さん

 

情報デザイン学科

映像メディアコース

高山 侑さん

 

芸術表現・アートプロデュース学科

アートプロデュースコース

宮内 龍太郎さん

司会進行:北村匠、津田智子

 

この学科ならでは!

北村:今日はよろしくお願いします。早速ですが、それぞれの学科・コースの授業についてお話をお聞きしたいと思います。

虎岩:僕は染織テキスタイルコースなのですが、大学に入るまで染色をしたことはありませんでした。そのためか京都造形芸術大学(以下、京造)の知識ある先生から学べることはとても魅力的だと感じましたね。

浅見:僕も虎岩くんと同じコースなのですが、染織は専門分野が細かく分かれてて、先生方は2つの領域を専門的にやれる人がさらにそこから細分化して教えてくださるので、新鮮な芸術ばかりに触れられます。どの学科もそうだと思いますが、様々な専門分野を持つ先生方から誰も知らないようなことを、新しく教えてもらえるのは面白いです。

高山:僕は映像メディアコースに所属しています。情報デザインを簡単に言うとそのまま、「見る」ということです。視覚情報であったり、コミュニケーションであったり、普段何気なく見ているそこらへんに貼ってある色んなポスターでも、見て何かを鍛えることを重視しています。映像メディアコースでは、最近だと一眼レフのデジタルムービーを使いながら、どうやってその『見る』発想をしていくか、表現していくかに取り組んでいます。それと、制作したものをさらにどう煮詰めていくかということを先生達と話すことで、意思疎通できることが僕は1番楽しいかなと思います。

櫻澤:確かに、先生方の存在は大きいですね。僕が所属する陶芸コースの教授陣はすごい方ばかりで、陶芸界のサラブレッドをお招きすることもよくあります。先生方はお年を召した方が多いのですが、授業形態は結構面白いことをやってるんです。陶芸はものづくりの中でも特に、最先端のデザインだけではまかなえない“もの”勝負な所があって、ずっと携わっていないといけないので、朝から晩まで土をいじったりしてます。また、その粘土の素材になる石ころや土などを山に取りに行ったりだとか、原料調達を自分でやってる子もいたりします。

佐藤:映画学科は、監督、技術、プロデュース、俳優の4コースで編成されていて、僕はその中の技術コースに所属しているのですが、映画学科は、専門で学ぶ以外にも技術コースの学生が監督コースの講義を受けて脚本について学んだり、逆に監督コースの学生が技術の講義を受けて、一緒にカメラを使って短編の映画を撮影することもあるんです。学科内で他のコースに行って、一緒に作品を作ったり機材の使い方を学べるので、映画学科は専門分野に分かれてはいるけど、映画の中で必要な機材や脚本の書き方、映画のプロデュースなどをどのコースにいても学べるのが強みですね。

北村:学科内でコースが分かれているからこそ、学べることがより沢山あるんですね。

佐藤:はい。2回生になると20人ぐらいのチームを組んで短編映画を撮影するので、集団制作の楽しみやチームならではの活動が出来ます。

北村:学内でもよく撮影しているのを見かけますね。

宮内:映画学科を知ってる人は多いと思います。それでいうと、僕が所属するASPⅰ学科は京造で一番影の薄い学科と言われていますが。

一同:(笑)

宮内:うちの学科は作品を作らない学科で、逆に“アート”を作ること以外は全てやるんです。たとえば論文や評論を書いたり、展覧会を運営し、展示や誘導など内部の仕事、作品を見るためのガイドブックや進行を育てるためのプログラム作成など、作品を作ること以外ならアート関係全部やるという学科です。本当に色んな事をやるんで、行き当たりばったりで予定が入ってきても、自分の苦手なことを知る良い機会になります。

北村:ASP学科は影の主役ですよね。ASP学科のアートプロデュースコースの人たちのおかげで、作品を作っても作品がそれだけにとどまらない。他学科との繋がりが見えますよね。

 

プロジェクトから生まれる“繋がり”

北村:繋がりと言えば、プロジェクトを通して他学科との繋がりはよくありますよね。

虎岩:僕はウルトラプロジェクトⅱに参加しているんですが、そのプロジェクトに参加すると使えるようになるウルトラファクトリーを利用して、染織テキスタイルとは全く違う技術を学んでいます。

浅見:僕も参加してるんですけど、基本的にウルトラプロジェクトはアーティストとして活躍する人の制作を手伝い、毎週コミュニケーションをとりながら作品のブラッシュアップをしていっています。それと、僕は別のプロジェクトに参加していて、そこでは講演イベントの作り方や雑誌の編集などを学べるんです。1年生の最初にマンデープロジェクトⅲという授業に参加しているので、そこで出来上がった色んな繋がりを通して仲良くなった人に面白い授業を教えてもらったりもしています。全く自分に関係ないことでも、聞いてたら面白い事が結構あるので、そういう場を上手く利用すれば他学科でしか学べない事も学べるんです。

高山:僕は情報デザイン学科の映像メディアコースにいるんですけど、その中にいながら昨年度は歴史遺産学科のような、歴史に携わるプロジェクトをやっていました。学内にはギャルリ・オーブっていうのがあるんですけど。

津田:トラやんⅳがいるところですよね。

高山:そう、トラやんの足下にある100畳ぐらいの空間を使って、昨年イタリアのあの有名ブランドのグッチ社90周年を祝う展覧会とイベントⅴがあったんです。イタリアの伝統工芸品と京都の伝統工芸品を展示したんです。デザインを専門として学んでいますが、歴史に携われた良い経験です。

櫻澤:僕は1年生の頃からプロジェクトに入っていて、そこでは授業よりももっと色んな事が起こるので、入るのと入らないのとでは大きな違いがあると思います。プロジェクトではイベントを運営する事が多いのですが、地域振興などで関わった伝統、習慣を取り入れた作品を作り、それによって地域の方に自分たちの町の良いところを再発見してもらって、自信を持ってもらう。そういったイベントを企画、運営してきました。自分も自発的になれるし、興味を持って集まった集団が学科以上の授業のように感じて、陶芸をやってるだけで4年間過ごすのとプロジェクトなどの団体に所属して動いてきた4年間の大学での密度の違いを思うとその差はすごく大きいなと感じました。

宮内:僕は3年まで、ASP学科が運営しているART ZONEという三条にあるギャラリーでの展覧会に参加していることがほとんどでした。でも同じ学科だけじゃなく他学科のスタッフと一緒に運営することもありました。そうやって学内学外問わず色んなアーティストの方と関わって3年間を過ごしたのですが、そろそろ外に出てみようと思うようになり、インターンに参加したんです。実際に社会に出て会社で2週間ほどの研修があるのですが、僕は天王寺にある「矢野紙器」という段ボールを製造している会社に行きました。そこでは子どもを対象としたワークショップや段ボールを使った創作教室を開いているんです。子ども達に「おっちゃん!」とか言われながら参加していましたね。

一同:(笑)

北村:それはショックですよね。

宮内:はい。でも関わっていた人達の年の幅が広くて、一番上の人やったらおじいちゃんぐらいの人がいましたしね。色んな人と関わりながらインターンを過ごせて楽しかったです。

 

集団の中で学ぶ、次に繋げる

北村:他学科との交流があるという話がよく出ましたが、プロジェクトなどで出会った人達との関係で、自分が一番良かったなと思うことや得たものはありますか?

虎岩:大学は現役生だけじゃなくて、今まで色んな事をやってきた人もいるので、以前、料理人をやってたとか海外回ってたとか、そういう人達の話が聞けるのはすごく良い刺激になってますね。

北村:自分の世界が広がりますよね。

高山:そういった人達とのコミュ二ケーションって“次に繋げる”ことが大事ですよね。人が大勢だったら、自分だけじゃなくてもちろん他の人もいる。だから周りが見えるかということが重要になってくると思うんです。僕は情報デザインにおいて、クライアントが希望することの中でどう仕事をしていくか、どう目的に合わせた形で動けるかということよく意識しています。その時、自発的に動いて次に繋げる事が出来れば、一回きりで終わらないので。

北村:大学で出会った人から学んだことが自分にもたらすものは大きいですよね。

宮内:僕は集団の中にいて、それぞれ求められてる役割があるんだと知りました。先生の紹介で奈良県の平群という町の都市開発に関わったんです。これからの10年、町をどうしていこうかという結構シビアな話だったのですが、それをワークショップを通して解決して、ほぐして意見を出そうというものでした。僕はそれに“ファシリテーター”という進行役として参加しました。でも、始め「いつも通りヘラヘラしといてくれたらいいから!」って言われたんです。その時は、これは多分落ち着いてやってくれという、僕を和ませるために言われたのかなって思っていたんですけど、終わった後にそういう意味じゃないんだって知ったんです。

津田:どういう意味だったんですか?

宮内:話し合いの時に、その町のおじいちゃんが「うちはこういう町や。こういう見所があるからそんな新しいことはせんでええねん」とヒートアップする事が度々あったんです。そういう場で、一旦話を終わらせたり、別の話題になるようなちょっと外れたことを言うワイワイした奴も必要だなと思ったんです。僕は元々あまり落ち着きがないというか、ヘラヘラしているところがあったので、早く直さないとなあといつも思ってたんですけど、そういう自分にも場を盛り上げる、和ますといった役割があるんだなと気づいたんです。全員がしっかり、かっちりした人ばかりの集団だと何も生み出せないよなって。

北村:なるほど。自分に対する見方が変わる経験って中々ないですよね。

 

京造に入って変化したこと

北村:皆さんが京造に来て、高校までのイメージとのギャップって色々あると思いますが、特に自分のどこが変わったと思いますか?

虎岩:京造に入ってアートの業界は幅がすごく広いと感じました。荒野に放たれた感じで、何事も「もうやるしかない」という意識に変わりました。自分の力でやらなきゃ何も進まないと感じたことで、やっていく意味を感じられたんです。

浅見:それは僕もあります。僕も虎岩さんみたいに意識の変化がとても大きくて、高校とは環境が全く違うので、意識が変わったというか意識が変わらざるを得なかったと言えるぐらいです。実際に自分のすぐ隣にアーティストがいると思うと、自分も焦るというか、その緊張感を常に感じるようになりました。

高山:僕も同じですね。大学ってほっといても卒業出来ちゃう所でもある。でも何かしたい事があってわざわざ芸大に来ている訳ですから、何かに参加しますよね。その時、実際に現場で働いてる人がたくさんいる中で、自分がどうすべきかというのをかなり意識させられます。高校生と違って、生活の為に自分がこれからどうするか、かなり考えさせられました。

北村:4年間の大学生活の中で何をやり遂げるか、これからをどうするのかと考えさせられることは確かにありますね。

高山:でも、それが具体的な形に残らない場合もあると思うんです。作品を作る中で、上手い事、時間の中に収められずに終わったり。必ずしも形に残るものではありませんが、形に残らなくとも“やった”という経験がちゃんと次に繋がると思うんです。

津田:なるほど。

櫻澤:僕も大学生活がすごく大事だと感じています。4年間かけて作品を作ってきましたが、そういった時には自分自身と向き合う時間がすごく大切だと思うんです。段階を踏んで「今自分が何をしなくちゃいけないか」をちゃんと考えながら次の一手を動かせるようになるので。そうやって、自分が何をすべきかがわかると思います。

北村:大学の4年間にはそういう時間も詰まっているんですね。

佐藤:僕の場合は、高校時代と比べて、一日に対する意識が変わったと感じています。高校は普通科に通っていたんですが、毎日ある授業をどうやってやり過ごすそうか、という感じでした。でも大学でもそれだと自分のしたい事すらもよく分からなくなってしまうので、自分が今日何をしようかな、何を学ぼうかなということを意識して考えて過ごすようになりました。

北村:確かに、どれだけ意識するかで大学で学び取れることって変わってきますよね。

佐藤:それだけ京造は色んなチャンスがあるので、意識して周りを見てないと見過ごしてしまうこともあるので。

宮内:そうですよね。僕が高校の時と一番変わったと思うのは、振られた話には進んでのるようになったことです。この大学、「こんな事やってみないか?」っていうことがよく舞い込んでくるんです。入った頃は自分には無理ですって断って、あまり活動してなかったんですけど、大学生に舞い込んでくる話って高い完成度とか完璧である必要なんてなくて、それなりに体験して学びとってくれたらいいとか、そのうちに自分の業界に来てくれたらいいなっていう程度だったりするんです。だから、責任感はもちろんあるけど、そんなに重くはないんだと気付いてからは、どんどん参加するようになりました。失敗もするけど「こうすると失敗になってしまうのか」っていう失敗から学べる事がいっぱいあったんです。僕、失敗ばっかりするんですけど、失敗してなんぼだなってこの大学に入って思うようになりました。後、半年で社会に出るので、もうちょっと失敗していきたいなと思いますね。

北村・津田:ありがとうございました!

学科別の授業やプロジェクトでの印象的な経験、そしてそこから生じる様々な出会い。大学の4年間で自分には一体何が出来るか? これからどうやって過ごしていくか? それらは今の自分の行動によってどうにでも変わるし、まだまだ自分自身の変化がこの先には待っているのだと知ることが出来た。受験生だけでなく、在学生であるわたしも多くを学び取ることができ、学生の力を強く感じた濃い40分間であった。(中野千秋)​
What's up 京造(男子) イベントの様子

イベントの様子

ⅰArt Studies and Clutural Productionの略

ⅱ ultrafactoryで行われる世界の第一線で活躍するアーティストやデザイナーを中心として行われるプロジェクト。

ⅲ入学直後の前期2週間に一年生全員が受講するワークショップの授業。9月には「京造ねぶた」を制作する。

ⅳヤノベケンジの作品『ジャイアント・トラやん』。京都造形芸術大学のギャルリ・オーブに立たずむ。火を噴く事が可能。たまに動く。

ⅴ 「京都・フィレンツェの伝統を未来につなぐ職人技 時の贈りもの」という展覧会。京都と姉妹都市関係にあるフィレンツェを代表する伝統皮革工芸のGUCCI社の創設90周年を記念して昨年2011年に開催された。

本イベントは2012年7月28日に開催されました。

本文中の役職、肩書き、固有名詞、その他各種名称等は全て取材時のものです。

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